August 14 2024

「萬古焼」とは? 特徴や魅力、窯元や陶器市情報

萬古焼の起源と歴史的変遷

萬古焼は、江戸時代中期の元文年間(1736〜40)に、桑名で陶器専属の問屋を営んでいた豪商・沼波家の沼波弄山(ぬなみろうざん)が、茶趣味が嵩じて、朝日町小向に萬古焼を開窯したのが始まりです。沼波家は「萬古屋」として陶器の廻船問屋を営んでおり、幼少期から茶道に親しんだ弄山は、異国風の斬新な文様や形を取り入れた優雅な作品を製作しました。彼の作品は異国のデザインやオランダ文字、更紗模様などを取り入れ、当時の日本の知識人から大変な人気を集めました。

弄山の死後、桑名にあった古物商、森有節(もりゆうせつ)と弟の千秋(せんしゅう)が萬古焼を再興し、独自の新技法を生み出しました。特に有節は煎茶急須の研究に熱心で、木型による急須を考案しました。また、ピンク色の釉薬や粉彩釉を使用した作品は、大いに賞賛されました。

その後、山中忠左衛門(1821〜78)が四日市に窯を築き、有節萬古の技法を広め、明治時代には四日市萬古が産業として確立されました。明治時代には、半磁器の開発に成功し、さらに大正時代には国際的な需要が高まりました。戦後は、国内市場向けに焦点を当て、茶器を主とした「四日市萬古焼」が伝統工芸品に指定され、現在も続く地場産業として栄えています。

萬古焼の魅力

萬古焼の一番の魅力はその頑丈さと耐久性です。陶土と磁土を組み合わせた半磁器の特性により、非常に割れにくく、耐水性・耐火性に優れています。これによって、長い期間使い続けることができる丈夫な焼き物として評価されています。

また、その自由度の高いデザインも魅力の1つです。伝統的な型や技法にとらわれず、自由な形状や色彩の作品が多く生み出されています。萬古の印があることが唯一の共通点で、その他の部分は作り手の創造力と技術に委ねられています。

さらに、釉薬を使用せず、素材そのものの色を活かした器作りが行われている点も重要です。作品の表面に施された特有の質感や、素材の味わいが存分に楽しめます。

そして、急須などの茶道具を通じて、使い込むほどに変化するお茶の味わいを楽しむことができるのも、萬古焼の魅力です。時間と共に変わる色合いや風合いは、使う人の手に馴染み、愛着を持って使い続けられる要因となっています。

萬古焼の特徴

萬古焼の特徴は、その耐熱性と多様性にあります。特許取得済みの耐熱性を持つ陶土は、リチウム鉱石が含まれており、直火やレンジ、炭火など様々な熱源に耐えます。また、形や色に制約のない自由な発想で製品が作られ、伝統的な技法と現代的なデザインが融合されています。成形方法や焼成も多様で、個々の陶芸家が独自のスタイルで作品を生み出しています。

萬古焼の代表的な窯元

光泉窯

光泉窯は、三重県四日市市に拠点を置く萬古焼の窯元です。和モダンなテイストを持つ洗練されたデザインの器を制作しています。手作業にこだわり、個性豊かな釉薬を使用して美しい色合いが特長です。人と人の出会いを大切にし、温かな想いを込めながら、日常の食卓を彩るうつわを生み出しています。

土本製陶所

土本製陶所は、三重県四日市市にある萬古焼の窯元です。伝統的な技術と現代のデザインを組み合わせ、機能的で毎日手に取りたくなる器を制作しています。日常のひとときを美しく、楽しくすることを願いながら、心を込めて作陶されています。

藍窯堀内製陶所

藍窯堀内製陶所は、三重県菰野町にある萬古焼の窯元です。伝統に根ざした基本を大切にしながらも、新しい感覚を取り入れた製品作りを目指しています。窯名に込められた「藍」の字は、木綿の感覚を日常の器に取り入れたいという願いが表れています。彼らの器は、伝統と革新が共存した美しいデザインを持っています。

現代の萬古焼

現代の萬古焼は、伝統と革新が見事に融合した魅力的な陶器です。伝統的な技術を基にしながらも、現代のデザインやライフスタイルに合わせた製品が豊富に生み出されています。耐久性と美しさを兼ね備え、国内外で高い評価を受けています。また、環境への配慮や若手陶芸家の育成など、持続可能な発展にも取り組んでいます。

萬古焼の陶器市ー四日市ばんこ焼陶器まつり

「ばんこ焼 陶器まつり」は、三重県四日市市で毎年開催されるイベントで、萬古焼の魅力を広く知ってもらうために窯元や卸売業者などで作る団体によって主催されています。40以上の店が四日市市の会場に集結し、萬古焼の土鍋や急須、カラフルな皿や茶碗などがお得な価格で販売されました。これらの商品は市価よりも2割から7割ほど安く提供され、多くの人々が手に取り、お目当ての商品を手に入れることができました。以前は萬古神社周辺で行われていましたが、2021年からは四日市ドームで開催され、半額近い価格で販売されるブースもあり、毎年大変な人気を集めています。

まとめ

じわじわと人気を高めている萬古焼。価格も良心的で使いやすいデザインのものも多くあります。ぜひ普段の食卓に取り入れてみてはいかがでしょう。

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