August 12 2024

「有田焼」とは? 特徴や魅力、窯元や陶器市情報

有田焼の起源と歴史的変遷

有田焼の歴史は、日本の陶磁器産業における重要な位置を占めています。その起源は、17世紀初頭にさかのぼります。当時、朝鮮からの陶工、特に初代金ヶ江三兵衛(通称:李参平)らが有田の泉山で陶石を発見し、この地で磁器の製造を始めました。この時期、有田焼は「伊万里焼」とも呼ばれ、その製品は伊万里から輸出されました。

初期の有田焼は、1610年代から1650年ごろにかけて製造された「初期伊万里」が特に注目されます。これらの作品は、中国陶磁の影響を受けており、染付けと呼ばれる青い模様が特徴でした。素地は厚く、シンプルなデザインで、その素朴さが魅力でした。

しかし、1640年代には初代酒井田柿右衛門によって色絵(上絵付け)の技術が導入され、有田焼は一変しました。色絵により、単色の染付けから多彩な色彩の使われた作品が生まれ、当時は画期的なものとなりました。これにより、有田焼は芸術的な価値がさらに高まりました。

1670年代から1690年代にかけては「柿右衛門様式」と呼ばれるスタイルが流行しました。この様式では、乳白色の素地に、余白を残した絵画的なデザインが特徴で、高度な技術と美しさが融合しました。

有田焼は時代とともにさまざまな様式を発展させ、美術品としての評価が高まりました。特に、19世紀には国際的な展示会で名声を得、ヨーロッパやアメリカで高い評価を受けました。これらの展示会における有田焼の作品は、ジャポニスムの流行を牽引し、日本の陶磁器産業の発展に大いに貢献しました。

戦後、有田焼は工業製品や碍子などの需要も増加し、さらなる発展を遂げました。現在の有田焼は、食器や美術工芸品の生産が中心であり、その美しいデザインと高品質は、国内外で高く評価され続けています。有田焼は、日本の陶磁器産業における貴重な伝統を受け継ぎながら、現代においてもその魅力を発揮し続けています。

有田焼の魅力

有田焼は、透き通るような白い磁肌が特徴的な磁器です。この白磁は非常に美しく、高級感があります。また、有田焼の特徴の一つは、呉須と呼ばれる藍色の染付けです。この染付けは、磁器の表面に青い模様を描くために使われ、独特の雅な雰囲気を醸し出します。

さらに、有田焼はガラス質の上絵具(赤・緑・青・黄・紫など)を使用して鮮やかな赤絵を描くことでも知られています。この赤絵は、白磁の背景に美しい赤色の模様を施し、作品に華やかさをもたらします。

有田焼の製品は手触りも特別で、表面はガラスのように滑らかです。触れると高級感を感じます。さらに、有田焼は特有の高い音を持つことでも知られています。爪で軽くはじくと、美しい音色が響きます。

美しさだけでなく、有田焼は実用性にも優れています。耐久性が高いため、食器や茶道具、花瓶など、日常的に使うアイテムとしても重宝されています。

有田焼は日本の陶磁器の中でも特に高い評価を受け、その美しさと機能性が調和した伝統工芸品として、国内外で多くの人々に愛されています。

有田焼の3つの様式

有田焼は大きく「古伊万里様式」「柿右衛門様式」「鍋島様式」の3つの様式に分類され、それぞれ独自の特徴を持っています。

古伊万里様式

  • 江戸時代に作られた有田焼の総称。
  • 装飾が派手で、金、赤、緑、黄色などの細かい装飾が特徴。
  • 鳳凰や龍、吉祥紋などの文様が多く描かれ、派手さが際立つ。
  • 昔のヨーロッパの好みに合致し、主に海外向けに製造された。
  • メディアなどで紹介され、有田焼というとこの様式をイメージする人も多い。

柿右衛門様式

  • 乳白色の地に赤、青、緑、黄色などの絵付けが特徴。
  • 赤絵と呼ばれ、1650年代から1690年代に多く作られた。
  • 酒井田柿右衛門という江戸時代の名工にちなむ。
  • 古伊万里様式とは対照的に、余白を活かした自然の描写が特徴。
  • マイセンなどヨーロッパの窯で模倣された。

鍋島様式

  • 鍋島藩窯様式とも呼ばれる。
  • 赤、黄、緑の三色を基調とした「色鍋島」、藍で絵付けされた「鍋島染付」、青磁釉をかけた「鍋島青磁」などがある。
  • 色鍋島は藩直営の窯で、美しい器が献上された。
  • シンプルながら独自の風格があり、現代でも日常使いの食器などが作られている。

有田焼の代表的な窯元

柿右衛門窯

「柿右衛門様式」を創始した窯元で、初代柿右衛門から始まり、15代目まで受け継がれています。この窯元は、鮮やかな赤絵と乳白色の余白のコントラストが特徴で、ヨーロッパ磁器界にも多大な影響を与えました。その美しい絵画のような構図は、世界中の人々を魅了しています。

今右衛門窯

70年以上の歴史を持つ窯元で、十四代目が受け継いでいます。江戸時代には鍋島藩への献上品として「色鍋島」が作られましたが、その御用赤絵師を務めた今右衛門家が、今もなお伝統的な技法を継承し、新しい技法も開発しています。特に「雪花墨はじき」という技法は、白の濃淡を活かして美しい雪の結晶文様を表現するもので、有田焼の新しい美を追求しています。

源右衛門窯

260年以上の歴史を持ち、古伊万里様式を基本にしながらも、独創的でモダンなデザインを取り入れています。絵付けの柄を器だけでなくアクセサリーやインテリアに広げたのはこちらの窯元です。近年では、万華鏡や万年筆など、新しい視点で有田焼の魅力を伝えています。

ARITA PORCELAIN LAB

現代の有田焼を代表するブランド。創業1804年の歴史を誇る有田焼の老舗窯元、七代目弥左ヱ門が現代の感性と200年の伝統を独自に組み合わせて生み出しました。

1616 arita japan

ブランド名の「1616」は、有田焼の祖と言われている李参平が、1616年に有田で良質の磁石を発見したことに由来するそうです。デザイナーの柳原照弘さんが生み出す普遍的なデザインが人気を呼んでいます。菊の花びらをあしらった「TYパレスプレート」が代表作です。

現代の有田焼

現代の有田焼は伝統を守りつつ、多彩なデザインと個性を持つ窯元が存在し、技術向上と多様な原料を活用しています。各窯元は形状、絵柄、釉薬などで独自の個性を打ち出し、有田焼の製品は窯元ごとに異なるデザインを楽しむことができます。この多様性が有田焼の魅力であり、伝統と革新が共存しています。

高価なイメージだった有田焼も、今では数百円からというカジュアルな商品もあり日常使いされています。また創業から400年を迎えた2016年には佐賀県が主導し「ARITA. 400project」を発足。様々なプロジェクトを通して有田焼きの魅力を国内外に発信し、有田焼の存在感を示すことと、リブランディングに成功しました。

有田焼の陶器市ー有田陶器市

明治29年に深川栄左衛門と田代呈一の主催で開催された陶磁器品評会が、有田陶器市の始まりとなりました。この陶器市は毎年4月29日から5月5日までの期間に開催され、有田の町内に多くの店が並びます。通常は静かな陶磁器の里が、この期間中は賑やかになります。

この陶器市には九州を中心に全国から約120万人の人々が訪れ、磁器製品の豊富さと手頃な価格、そして独特の活気が魅力とされています。陶器愛好者や観光客が毎年このイベントを楽しみに訪れ、有田の魅力を満喫します。

まとめ

コレクションとしての価値も高く、精巧で美しい作品の多い有田焼は現代の食卓においても存在感を発揮し続けています。一方でカジュアルなラインやモダンなデザインなど次世代につながる器も多く、日本の器を代表する焼き物と言えます。

Narrative Platformでお気に入りの器を見つける

作家ものの器を探すなら「Narrative Platform」。動画で作家さんの作陶の様子やこだわりなど、詳しく紹介しています。

https://narrative-platfo